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子ども歳時記10
優しさがうまれる時間

 秋も深まり、木々も紅く黄色く色づいています。強い風にはっぱが舞い落ちてきます。『最後のひと葉』や『葉っぱのフレディ—いのちの旅』が頭をよぎり「いのち」に思いをめぐらせたりもします。

  もうすぐ今年が終わりますね。どんな一年でしたか。皆さん、いろいろあったと思いますが、それでもこの一年を振り返った時に、親子で笑い合えた時間や、お だやかに一緒にすごせた時間はどのくらいありましたか。そんな時間をたくさんもつことができたら、優しさもうまれるような気がします。

  幸せで、満ち足りている人がわざわざ他人を傷付ける言動をしたくなると思いますか? 優しさがうまれる時間が足りなかったな〜と感じられたお母さん、お父 さん、一緒に遊んだり、お風呂に入ったりといろいろあるでしょうが、絵本も読んでくださいね。絵本の中の世界を一緒に体験していく時間が増えるほど、子ど もの成長が見えたり、子どもと過ごす時間がもっと楽しくなったりしますよ。

 それに、絵本って子どもだけのものじゃあないんです。

『おこだでませんように』(くすのきしげのり/作、石井聖岳/絵、小学館)は小学校低学年の課題図書でもあったので読まれた方も多いと思いますが、子育て真っ最中のお母さん方はどう読まれるでしょうか?

 反省する人も多いかも。育児書なら理屈も含めて何ページもかけて書いてあってもピンと来ないようなことが、こんな短い絵本でこんなにわかりやすくストンと心に届くように描いてあります。

 子どもに「自分で読んどきなさーい」と一人読みさせるよりも、親子で読んでほしい、子どもに関わる大人に読んでほしい絵本です。

 こんな絵本や、物語、昔話などさまざまな絵本を親子で読んでいくうちに、親も子も成長していくのだと思います。

 ゆったりとおだやかな時間の中で、物語に入り込みわくわく、どきどき、泣いたり笑ったり安心したりと、感情体験を積み重ねることがこころを育んでくれるものだと思います。

 さて、もうすぐクリスマス。そろそろ何を用意しようかと頭を悩ますご家庭も増えてくる頃でしょうか?

 どうか全国のサンタさんが、親子を引き離す電子機器ではなく親子をつなぐあったかい絵本を届けてくれますように。

 親子をつなぐものに囲まれて生活することで、親子ともどもに優しさがうまれる時間が増えますよ、きっと。

(まつもと・なおみ)


『おこだでませんように』
子どもの心の揺れや安堵を瞳の奧に感じて

 暦の上の秋はもう遠い日に過ぎましたが、まだまだ暑さは残っています。
 もうしばらくすると学校や幼稚園では、秋の行事が行われます。息子の通う幼稚園では、まもなく「芋掘り」遠足があります。わたしの子どものころも、芋掘りは秋のメインイベントでした。蔓を引っ張り、芋が土と一緒に二つも三つも連なって抜けたら大歓声です。

 作業が終わった後、虫の食ったものとかポキッと先の折れたものとかを喜んで持って帰りました。母が「もうちょっと綺麗だとよかったのにねえ」といいながら蒸かしてくれたのも懐かしい思い出です。
 去年、子どもも初めて体験したのですが、たくさんの友達と一緒に「うーん、しょ。うーん、しょ」と大喜びで芋掘りに挑戦していました。そのおかげでしょうか、芋栗なんきんが苦手な息子でしたが、蒸かしたさつま芋は大好物になりました。

 ここは、「あおぞらようちえん」。雨で一週間延期になってしまった芋掘り。園児たちは、芋掘りを想像しながらおおきなお芋を、紙をどんどんつないで描いていきます。それは船になり、恐竜になり、みんなでおいもパーティーの開催です。

 最後は、おならの力で空をとび宇宙旅行。子どもたちのゆたかな空想が愉快に快活に描かれています。色彩は二色でシンプル。無邪気な子どもたちの姿がありありと描かれていて、親子とも大好きな一冊です。
 この絵本は、約 40年前の東京の幼稚園での実話に基づいたお話です。実際、子ども達の描いた絵は縦1・1メートル横5・4メートルにまでなったというから驚きです。 息子もどんどんおおきくなるお芋を見て、笑いながらすっかり「あおぞらようちえん」の園児気分です。


『おおきなおおきなおいも』
(赤羽末吉 /さく・え、福音館書店)

『えほんのせかい こどものせかい』
(松岡享子/著、
日本エディタースクール出版部)
  

 芋掘りを経験して以来、何度読んだことでしょう。 40年前の作品なのに園児が宇宙旅行するなんて、若田宇宙飛行士もびっくりする絵本だとおもいます。
絵本を読んでいると、情景がまるで過去に実際見たことがあるかのように浮かび上がってきたりします。また、日々の生活の中ではふと絵本の一場面と同じような情況になることがあります。

 子どもは本棚の前に立ち、今日読んでもらう一冊を選んだら「これこれ!これ読んで!」と持ってきます。読んでいると「あー今日の○○ちゃんみたいだねえ」「おんなじだねえ」と気付かされることも度々です。
  《幼い子どもにとって、絵は〈ほんとうのこと〉を意味します。肉眼では見ることのできないものや、現実には起こり得ないことがらも、それが絵で示される と、子どもたちにとっては、それは一つの経験になります。(中略)絵が想像上の出来事に、確固たる現実感を与えるからです。》(同書 39ページ)

 キラキラしたその瞳の奥で子どもたちは実際に体験しているような感覚をおぼえているのですよね。それが実体験をともなっていたらなおさらのこと、想像はふくらむばかりです。
 私は子どもと絵本を読むことで、その時の子どもの心の揺れや安堵を瞳の奥に感じる気がします。
 美味しいものを食べて、いろいろな体験をして、楽しい絵本を読みましょう。暑くても、もう中秋だとおもえば、少しは涼しく感じませんか。

(絵本講師/かとう・みほ)

自分の中の子ども心に訴えかけるような絵本

  子どものためにと読んでいる絵本が、気がつけば自分のためになっていると感じることも多いのではないでしょうか。癒され、好奇心を掻き立てられ、自分の中 の子ども心に訴えかけるような絵本もあれば、社会の現実をテーマにした絵本には、人として親として自分がどうあるべきかを考えさせられます。

 『しらんぷり』(梅田俊作・佳子/作・絵、ポプラ社)は、「いじめ」をテーマに 219ページにわたり全編モノクロで描かれた絵本です。

  小学 6年生の教室。4人組にいじめられるドンチャン。「ぼく」は、ドンチャンがやられるままになっているのを見て見ぬふりをします。口に出したら今度は自分が やられそうだから。ドンチャンは6年の2学期の終わりに、とうとう転校してしまいます。「ぼく」は自分の気持ちに整理をつけるため、卒業式前日のリハーサ ルの時に、全校生徒の前で手を挙げ、こう言うのです。

《「ぼく は、勇気がなくて……、友だちがいじめられているのに、しらんぷりばかり……、してて……」「いじめられたら、転校するしかないなんて……、そんなの、お かしいのに……。このまま、しらんぷりしたまま、卒業して……、こんな気持ちのままで、中学生になるのは、いやで……、だから……」》

  いじめる人、いじめられる人、しらんぷりする人、親、教師、屋台のおじさん——登場人物の態度や言葉は、「ぼく」の心を揺さぶります。いじめるほうが悪 い、やられたらやり返せばいい、嫌なら嫌だと言えばいい? 「いじめ」に真正面から向き合っているこの本を読むと、そんな言葉で簡単に解決されるものでは ないことに気づかされます。


『しらんぷり』
(ポプラ社)

『愛するということ』
(紀伊国屋書店)
  

  近年、子どもたちが携帯電話のメールやインターネットを利用する機会が急激にふえ、「ネット上のいじめ」という新しい形のいじめが深刻化しています。被害 者にも加害者にも簡単になり得る「いじめ」から、私たち大人は、子どもたちをどのように守り、どんな態度で接していけばいいのでしょう。

 私たちは、できるだけ他の人と考えを違わないようにし、密着することで身の安全を確保しがちです。それなのに、どこか孤独で不安定感を感じることがあります。「いじめ」は、その孤独や不安定感からの脱出を歪んだ形で表したものといえるかもしれません。

  『愛するということ』(エーリッヒ・フロム/著、鈴木晶/訳、紀伊国屋書店)に、《人は意識のうえでは愛されないことを恐れているが、ほんとうは、無意識 のなかで、愛することを恐れているのである。愛するということは、なんの保証もないのに行動を起こすことであり、こちらが愛せばきっと相手の心にも愛が生 まれるだろうという希望に、全面的に自分をゆだねることである。愛とは信念の行為であり、わずかな信念しかもっていない人は、わずかしか愛することができ ない。》とあります。

 「愛は、技術であり、習練するものであ る」と著者はいいます。親子愛、異性愛、友人愛——自分以外の人に対し、気遣いや、尊敬、理解をもって、能動的に愛してみませんか?「どうすれば愛される 人間になるか」ではなく、「どうすれば人を愛せるようになるか」を意識することで、何かが変わる気がするのです。こんな時代だからこそ、愛の可能性を信じ て。

(絵本講師/きた・もとこ)

自然の小さな魔法の奥深さ

  若葉が目にしみる季節になりましたね。次々と芽を出す草花や、日に日に緑濃くなる街路樹を見ていると、改めて自然の巡りの不思議を感じ、粛然とした気持ち になります。子どもと過ごす日々のおかげで、私の中の錆びついていた「センス・オブ・ワンダー」が少しずつ磨かれてきたようです。

  先日の昼下がり、幼稚園の庭で、一筋の飛行機雲が青空にスーッと伸びているのを見て、友人が「飛行機雲が消えないと天気は下り坂、なんだって」と言いまし た。週間天気予報はずっと晴れマークだったけどなあと思いましたが、その晩、本当に雨が降ったのです。そして、翌朝は爽やかに晴れました。友人と私と子ど も達は、「ほんとに降ったねー」と目をきらきらさせて喜び合いました。

  『あしたのてんきははれ?くもり?あめ?』(野坂勇作/さく、根本順吉/監修、福音館書店)は「観天望気」という、雲や風向きや動物の様子を観察して天気 を予想する方法を紹介しています。その土地ならではの天気の見方があって、昔から人々は自然との語り合いによって天気を予想してきました。農業や漁業など は、天気が仕事や生活に直接大きく影響するからです。

 私は子 どものとき、「あの山が近くに見えたら、天気は下りだよ」と母に教えられてからは、その山の表情がいつも違って見えるようになりました。黒々と迫って近く に見えるときもあれば、青々と茂る木々がはっきりと遠くに見えるときもあるのです。遠足などの前には、祈るような気持ちで眺めました。

 都市生活と天気の関係は薄いかもしれませんが、自分だけの天気予報を発見し、これが当たったときの喜びはひとしおです。自分の足で立って生きているという、ささやかな満足感を得ることができます。

 科学絵本は、知識欲を満たしてくれるだけでなく、物語を通して、さらなる疑問や自然の神秘性に気付かせてくれます。


『あしたのてんきははれ?くもり?あめ?』
(福音館書店)

『子どもが育つ条件』
(岩波新書)
  

 新学期も少し落ち着いてくると、私たち親は、つい、我が子を他の子と比べたり、周りの情報に流されたりして、あせってしまいますよね。子のためによかれと思って先回りしてしまいがちですよね。

  『子どもが育つ条件——家族心理学から考える』(柏木恵子/著、岩波新書)の第5章「子どもも育つ、親も育つ」の中で、《有能な観察学習者である子ども は、口やかましく言われること以上に、親がどうふるまっているか、どう生きているかということを自分のモデルとして学びます。(中略)親自身が、どんなこ とであれ、自らが成長すべく努力し、精一杯生きている姿をみせることが、子の発達に対して親がなし得ることです。》と親の役割について書いています。

 自然の不思議さに目をみはったり、絵本を読んで様々な感情を呼び覚ましたりすることも、親の成長の一つだと思います。

 また、絵本で拓いた五感は実体験をより豊かにしてくれるので、それらを共有することの積み重ねで、親子間の理解や絆が強まるのではないでしょうか。

  子どもにとっても親にとっても「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないと、レイチェル・カーソンはいいます。外で過ごすのが楽しい季節です。大 人こそ、絵本タイムで磨いた五感を駆使して、自然の小さな魔法の奥深さを再発見しましょう。そして、親子で感動を分かち合いましょう。

(おかべ・まさこ)

 

 木々も芽吹き始めました。子どもたちも進学、進級と新しい環境にワクワク・ドキドキの季節です。中には大きな不安感をもつ子もいるでしょう。
そんな心細い思いを、張りつめた心を、お母さん、お父さんがやさしく包んであげてください。抱っこしたり、手をつないだり、絵本を読んだりしてあげましょう。
やさしい声に包まれることは、抱っこやおんぶと同じように、安心できて心がホッとなり元気がでてきます。

 砂漠や岩場では育たない植物でも、土なら育ちます。ましてやよく耕してある畑なら、天をさしてすくすく伸びます。子どもにとっての「土」は、安心できる家庭環境ではないでしょうか。
受け止めてくれる人、見守ってくれる人がいると安心できるからこそ、友だちとのびのびと遊べるのです。好奇心を膨らませて行動し、失敗体験も繰り返すことができます。
私たち大人は、子どもたちが元気に育つことのできる肥沃な「土=畑」を用意しているでしょうか。

 現代の家庭が失ったものを取り戻す活動が様ざま生まれています。「早寝早起き朝ごはん」「オアシス運動」「親子の日」などなど。
当たり前の生活をしている人にとって「何をわざわざ」というようなことばかりですね。それをわざわざ強調しなければいけないほど、家庭から当たり前の生活が消えてしまいました。
そんな中で子どもたちは〈今〉を生きています。子どもたちは、何を見て・聴いて・読んで・感じて「子ども時代」を生きているのでしょうか。不安に駆られない大人は少なくないと思います。


『モチモチの木』
(岩崎書店)

『ゆきみち』
(ほるぷ出版)
  

  何を普通で当たり前と感じ、何をおかしい・変だと感じているのでしょう。ある調査によると「死んだ人間が生き返る」と答えた小学生が 15%もいたり、人を殺す経験がしてみたいと殺人をしたり、「無人自動車」の走行と通報された小学生の無免許運転など、私たちの「当たり前」では考えられ ない「異常」事態が増えてきました。

 子どもたちは豊かな「子ども時代」を生きる権利を持っていると思います。多様な判断材料を持たないうちから、大人と同じ情報や物事の決定権を持たせてはいけないと思います。
豊かな体験とは、真っ当な大人になっていくための必須条件だと考えます。それは、日々繰り返されている日常生活に始まり、自然や周りの人との関わり、耳か ら入る言葉の蓄積、様ざまな感情体験ではないでしょうか。昔なら普通にあった子どもの育つ環境も、今は意識して大人の責任で整えなくてはなりません。

 そんな現代ですから、絵本をいっぱい読んであげてください。すぐれた絵本には、作者が選びぬいた言葉と絵があり、理屈やお説教ではなく、子どもにもわかるように、書いてあります。

 古き良き時代のある家族の一年間の暮らしぶりを描いた『にぐるまひいて』や、子育て中の梟の親子を描いた『しまふくろうのみずうみ』などを読みますと、地に足のついた日々の暮らしや、生きていくことの土台になるような思いが胸に迫ります。
『モチモチの木』のじさまは、最後にこう言います。「〈略〉にんげん、やさしささえあれば、やらなきゃならねえことは、きっと、やるもんだ。〈略〉」。ま た『ゆきみち』のばあちゃんは「おうおう、いたかったのう。〈略〉うんとなくがええ、うんとないておぼえておくんじゃよ」。お母さん、お父さんの声が子ど もたちの心に届きますように。

(まつもと・なおみ)

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